今回も弊所あてに寄せられた体験談やご意見をご紹介致します。皆様もぜひ、ご参考になさってください。
会社の同僚の話です。その方は現在50代の女性です(Aさんとします)。Aさんのお父さんは、数年前にすでに他界しています。半年前、Aさんのお母さんも亡くなりました。子どもたちはAさんと長女のBさんの2人だけです。お母さんは遺言状を作成しておらず、生前、財産の相続は平等に行うようにと言っていました。お母さんは、ある場所に分譲団地の戸建てを所有していました。財産の相続の話を長女のBさんに持ち出したところ、Bさんは「もう少し落ち着いてから」と取り合ってくれません。なぜかというと、Bさんは数年前に離婚しており、そして子どもも2人います。実は、離婚後、住むところがなくお母さんの家に同居していました。それで、もしAさんと財産を平等に相続するとなると、家を出なければならなくなります。どうもそれが原因で渋っているようです。Aさんは、そんな事情を知っているので、Bさんに強く言えないようです。しかし、それではお母さんの遺言が果たせません。今は、弁護士に相談するか考えているとのことです。
ここがポイント!
お声を頂きありがとうございます。このケースではまずは何が目的なのかを考える必要があるのではないでしょうか?Aさんの目的は、Bさんが困ることではないと思います。そしてそれは、現実的には厳しいと思いますよ。遺言書がないので、現在この家は共有状態になっています。そして、その共有物をどうするかは民法で決まっています。共有物に変更を加える行為は、全員の同意が必要。管理に関する事項であれば、共有者の持ち分の過半数の同意。保存行為であれば、各共有者が単独でできるとされています。そしてこのケースで、Aさんに明け渡しを求める行為は、占有状態をを変更する変更行為とまではいかなくても管理行為と考えらえますので、共有者の持ち分の過半数の同意が必要になります。ご兄弟がAさんとBさんの2人だけなら過半数の同意を確保することは不可能だと考えらえます。つまりAさんはBさんに出ていけとは言えない可能性が高いということです。これは、倫理的にもかなっているのではとも思いますよ。ただ、判例でも占有部分にかかる地代相当額の不当利得益ないし損害賠償請求できるとされていますので、Bさんに家賃分を支払ってもらい住んでいただくというのが実務的には妥当なセンかなと思いますよ。
宮崎県行政書士会宮崎支部
かねこ行政書士事務所
金子 聡