今回も弊所あてに寄せられた体験談やご意見をご紹介致します。皆様もぜひ、ご参考になさってください。
私は、3人姉妹の三女として生まれました。5歳の頃に母が病気で入退院を繰り返していたこともあって、父方の兄の家でお世話になっていました。私から見たら伯父、伯母に当たる二人には子供がなく、私は上の姉たちと少し年が離れていたこともあって、伯父の申し入れで小学校に入る前に養女として伯父夫婦と養子縁組をしました。
今は、私も姉たちもそれぞれ結婚し、養父母も先に他界し、養父母の相続は、婿養子をとって私たち夫婦が引き受ける形になりました。
そんな中、実父が亡くなりました。
2年ほど前、癌がみつかり、もう、そんなに長くは持たないとは言われていました。そのことは私も知らされていたので、覚悟はしていました。
わたしは養子縁組後、実家とは次第に疎遠になっていて、実両親も養父母に遠慮したのか、季節ごとの行き来くらいになっていて、血を分けた肉親とはいっても、気持ちの上では、「親戚」という感じでした。だから、葬儀の前に連絡があり、「すぐ来てほしい」と言われたときは、実の親だし、お通夜の手伝いをしてほしいのかな?くらいしか思っていませんでした。
ところが、実母と、姉たちから聞かされたのは相続の話でした。
実父が亡くなって、初めて私はまだ、実父の子供の一人として相続人になっていることを知ったのです。
自分が「普通養子」という養子縁組の方法で養子になっているため、実両親との戸籍上のつながりはそのままで、養父母の子供になっているため、私も父の子供として財産分与の資格がある、というのです。遺言状もなかったため、司法書士の先生からは、法律通りに、母が半分、残りを姉妹3人で分けるか、話し合って決めるようにいわれたのだそうです。その、話し合いの為に、早めに呼ばれたということだったのです。
養父母が先に亡くなっていたこともあって、母の態度は冷ややかでした。私とあまり仲良くない、上の姉は当然のように「放棄するでしょ?」と言ってきました。「この家の子として育ってないんだし、もう、養子として相続はしてるんだから。両方からもらうなんて、勝手じゃない?」というのです。母も、口には出さないものの、賛成しているようでした。
お金の面だけなら、私は実父の財産は要らないと思いました。ただ、養子縁組後も、従姉妹として仲よくしてきた下の姉が、母や上の姉の圧力に負けて言うなりにならないか?だけは心配でした。母は、下の姉と父が仲が良い事も、あまり、良く思っていなかったのかもしれません。
返事は少し待ってもらって、私も弁護士さんや司法書士さんを友人や、夫の知り合いから紹介してもらって、相談しました。
なんとか、下の姉に少しでも有利に、と思ったのですが、ヘタに相続するよりは、放棄したほうが、後々、母が亡くなった後にもめないで済むだろうというお話や、放棄するにしても遺産分割協議書を作るときに同席させてもらうなどの条件を付けたらよい、というアドバイスをいただきました。
最終的に、私は相続放棄をして、母が半分、残りを1/4ずつ、姉二人が受け取る形で落ち着きました。
この件で懲りたこともあって、気が早いものの、夫の方の実両親とも話し合って、先に遺言書を書いてもらうことにしました。夫は、二人兄弟で、兄がいます。兄と夫と、実両親の4人で話し合って、公正証書で遺言書を作り、兄に実家は継いでもらうこと、生命保険の受取人を兄と夫に指定してもらう形に決めました。
ここがポイント!
お声を頂きありがとうございます。このケースでは普通養子縁組というのがポイントですね。養子縁組には「特別養子縁組」と「普通養子縁組」というのがあります。このケースのように普通養子縁組では、実親の関係は残ったままになるので、養親と実親の両方からの相続権があることになるのです。こういったケースは意外に多くて、僕の友人でも子供が幼いときに離婚し相手方が再婚したときに、その子供を特別養子縁組にするのか?普通養子縁組にするのかで悩んでいました。将来的な相続などを考えると特別養子縁組がいいと思われますが、やはり親子の関係が切れるのはさみしいという親心も当然ありそのハザマで苦しんでいました。その友人は結局普通養子縁組を選んだそうですが、将来のためにとゆいごん書を書かないといけないと言っていました。このように、相続トラブルの原因はいろんなところに潜んでいます。うちは大丈夫なんてそんなのんきなことなど言っていたら、、、。ご家族のためにもゆいごん書は必要です。
宮崎県行政書士会宮崎支部
かねこ行政書士事務所
金子 聡