相続ブログ第8回:デジタル遺品の整理
はじめに
スマホのロック、クラウド写真、ネット銀行・証券、サブスク、ポイント・マイル、SNS——いまや財産も契約も「画面の向こう」にあります。デジタル遺品を放置すると、料金の二重払い・資産の見落とし・アカウント乗っ取りなどのリスクが高まります。本記事では「生前にできる備え」と「相続発生後の手順」を、宮崎の実務感覚で整理します。
デジタル遺品とは?(代表例)
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デバイス:スマホ/タブレット/PC、外部ストレージ
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オンライン資産:ネット銀行・証券、電子マネー、暗号資産、フリマの売上金残高
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契約・課金:携帯電話契約、クラウド、音楽・動画・ソフトのサブスク、ドメイン・サーバー
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アカウント:メール、SNS、メッセージアプリ、ネットショップ
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データ:写真・動画、仕事ファイル、バックアップデータ
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ポイント・マイル:カード会社系、航空会社、量販店、交通系 等
生前にやっておくと“効く”3ステップ
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一覧化(見える化)
主要サービスだけでOK。サービス名/ID(または登録メール)/所在(アプリ・Web)/残高/解約要否をメモ。 -
アクセスの道筋を決める
- パスワードを直接書かないのが基本。保管場所と解除の手順を伝える(例:パスワード管理アプリ+緊急連絡先)。-
2段階認証の“第二手段”(予備メール・認証アプリの移行コード)も準備。
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法的枠組みでバックアップ
〇遺言:デジタル資産の承継先・連絡係(デジタル遺品対応担当)の指定。〇死後事務委任契約:携帯解約・サブスク停止・アカウント整理などの「死後手続きの代行」を事前に委任。 -
必要に応じて遺言執行者を置き、実行権限をはっきりさせる。
相続発生後の実務フロー(宮崎でも使える汎用版)
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デバイスの確保:スマホ・PC・外付けHDDの持ち出しや初期化を防止。
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料金ストップ:携帯・プロバイダ・主要サブスクの死亡による解約や名義変更を順次。
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資産の特定:銀行・証券等は郵便物/メール受信箱/通帳アプリから当たりを付ける。フリマ・決済アプリの残高・未入金に注意。
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アカウント対応:〇SNS・メールは「保存→閉鎖(または追悼化)」の方針決定。〇クラウド写真はダウンロードして共有アルバムへ。
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ポイント・マイル:会員規約で相続可否が異なるため、早めに各社に照会。PayPayはポイントは相続対象外です。
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暗号資産等の特殊資産:ウォレットの回復フレーズ・保管場所が分からないと回収困難。専門家同席で慎重に。
よくある落とし穴(注意点)
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二段階認証の壁:端末が初期化・故障していると復旧に時間。生前の予備コード管理が重要。
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自動課金の見落とし:月額数百円でも数が多いと大きな損失に。
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仕事データの扱い:許諾のない第三者提供に注意。職業情報は慎重に分別。
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“家族が使えるはず”の思い込み:規約上、譲渡不可/家族利用不可のサービスも。まず規約確認。
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写真と連絡先の消失:端末初期化の前にバックアップ退避。
そのまま使えるチェックリスト(簡易版)
□ デバイス:スマホ/PC/外付けの所在メモ
□ メール:主要アドレスと受信方法
□ 金融:ネット銀行・証券・保険の有無/残高メモ
□ 決済アプリ:残高・送金履歴・出金方法
□ サブスク:契約先・支払方法(クレカ/口座)
□ SNS/クラウド:保存方針(保存→閉鎖/追悼化)
□ ポイント・マイル:会員番号/相続可否の規約確認
□ ドメイン/サーバー:更新期限/解約・名義変更
□ 認証:2段階認証の予備コード・連絡先
□ 法的手当:遺言の記載/死後事務委任/遺言執行者指定
例:遺言への書き方サンプル(デジタル関連・付言事項)
私のスマートフォン・パソコンに保存された写真・動画は家族共有用に保存してください。
各種オンライン契約は料金が発生しないよう速やかに解約し、ネット銀行・証券・電子マネー等の残高は相続財産として手続きしてください。
デジタル関連の実務は、遺言執行者(または死後事務受任者)に一任します。
※法的効力を持たせるべき部分は本文(遺言事項)に記載してください。上記は趣旨例です。
まとめ
デジタル遺品は「存在を把握すること」自体が第一関門。一覧化→アクセス手段→法的枠組みの三段構えで準備すれば、相続時の混乱を大きく減らせます。宮崎でのご家庭事情や利用サービスに合わせて、最適な形にカスタマイズいたします。
かねこ行政書士事務所では、
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生前のデジタル遺品「見える化」台帳作成
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遺言(付言事項を含む)・死後事務委任の設計
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相続発生後の解約・資産回収サポート
まで一貫対応しています。お気軽にご相談ください。